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真夜中の虹


二人の会話はもう2時間以上も続いていた。はじめは挨拶で、それから今日起こった事を話し、冗談を言いながら少し大人の冗談が混じった会話となっていく。
最近はずっとそんな感じで、それから二人の問題へとなっていくのもいつもの事だった。どちらかが譲らなければ解決しない問題を何度も何度も繰り返している。そんな毎日が、続いていた。

結局は今日も二人の会話は、堂々巡りのワンパターンになった。何度も何度も同じ事を別の言い方に変えて話しているだけだった。
平行線は宇宙規模で考えれば交わる事も有るだろうが、それは卓上の論理だ。二人の問題はあくまでも現実で、嫌なほど現実過ぎで、決して交わる事は無いのに必死で交わらせようともがいているだけだった。

「それじゃ、そろそろ切るね」と「あっ、それからね」を何度も繰り返し、二人とも切るのをためらい、また解決しない問題へと戻っていく事を喜んで選択する。
軽いジャブを打ち合うように、相手をあまり刺激しない冗談を言い合い、そして今また底無し沼のような暗く深い問題へと入っていく。
ほんの少しだけだが、自分がこの時間を楽しんでいるような気がしていた。

最も正しい答えは、すでに出ていた。アドレスブックのお互いの項目を消し、履歴とメールを消去してしまえば良いのだ。全ての二人の記憶を消し去り、お互いの存在を知らなかった頃へ戻れば良いだけの事なのだ。
彼女はそれを求めているように感じた。自分がすがり付いているだけの様に思えた。

罪悪感と後ろめたさが同じ事を意味するのか、辞書で調べてみたくなりながらも、彼女との会話は続いていた。明日の事を考えれば、もう終わらせるべき時間だろう。
自分の中に明日も同じ事をするだろうと言う悲しい確信が有った。ただ、その確信が今、会話を終わらせる唯一の動機だった。
その確信が無ければ、この会話を永遠に続けても良いと思っているはずだ。

二人の同意の下、無理矢理終わらせた携帯電話をテーブルに置いて、やめる事にした煙草を咥えて玄関口から庭に出た。
朝から降り出した雨はあがっていた。雲は走るように流れ、景色の全てが月明かりに照らし出されていた。
虹は雨上がりに太陽の日に照らされて起こる光の現象だ。だとすれば、明るい月の日に照らされる真夜中の虹が有っても良いんじゃないかと思った。
朝がそこまで来ていた。






咥えたままの煙草の灰が、足元に落ちた。灰が落ちたのに気がついて、自分が煙草を咥えている事に気がついた。
月明かりに照らされて出来た長い影は、自分の背丈の倍以上有った。まるで、心の許容度を越えてしまった想いの様だった。
自分で解決の出来ない問題が圧し掛かっている間は、誰にも本音では話せないのだろうと思った。

極めて個人的な誰とも共有出来ない問題は、押し黙る事で恐怖を抑え付けることが出来ている。
話した途端、泣き出すか、笑い出してしまうか、自分でもわからないが、多分我慢は出来ないだろう。
話して苦しめる事よりも、話さないで苦しめる事を選択したのは自分だ。これが最も正しい選択だったのは間違いない。

月を眺めながら2本目の煙草に火をつけて、勝手口の横の石に座った。遠くから犬の鳴く声が聞こえた。
たまに暴走気味のスピードで走る車が静寂を切り裂き、現実の向こう側への入り口に居る事を自覚させてくれる。
向こう側へ行く魅力に負けそうになっている自分を、もうひとりの自分が大笑いしながら引っ張っている。

どっちみち、そう遠くないうちにお前はここにいられなくなる。それまで、苦しむだけ苦しんでいろ。彼は笑いながら言った。
彼の決め付けたその言い方が、今の私にはどんな慰めの言葉よりも心地良く心に広がった。
玄関口からキッチンへ入り、湯を沸かしてコーヒーをいつもよりも濃く淹れた。残念なくらい少しも苦く感じられなかった。


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The Sixth Sense (7)


ボクが歩いてきた方向をあごで差し「君のアパートに行くのには、こっちを回るよりもあっちを通った方が近いんじゃないの?」質問は本題に近づいているようだった。

「そこの手前の路地を入っていった所に有る公園を知ってる?君のアパートがあるあたりとのちょうど真ん中あたりになると思うんだけど」ストレートな言い方で、そこで何かが有った事を間接的に伝えてきた。

もう少しワクワク感が有っても良いのにと思ったが、まぁ警察官に「洒落」や「粋」を求めるのも無粋だという事だ。

彼らの言っている道も公園もすぐに何処の事なのかわかった。今日も昨日もバイト先のレストランへは、その道を通っている。
「公園が有った気がしたが、良く覚えていない。物騒だから最近は昼間も通らない。」と嘘をついた。「君子危うきに近寄らず」だ。

しかし興味の方は俄然出てきた。色々と聞きたくてウズウズしてきた。多分そんな目をしてしまったのだろう。彼らがこんな時間にウロウロしている本当の理由のヒントがもらえた。
「今日の昼頃、あの公園で女の人が倒れているのが見つかったんだ。わりあい騒ぎになったけど気がつかなかった?」

残念だが、このあたりの路上に人が転がっている事はたまに有る事だ。そんなに騒ぎになる事は無い。刺されただとか薬絡みで暴れたなんて話も良く聞く。
そういう出来事に関わりたくないから夜は遠回りしているのは、間違いのない事実だ。

ただ、昨日に関しては少しばかり事情が違ってくる。忘れようとしていた事を無理矢理思い出させられた感じで、落ち着いてきたはずの気分もまた落ち込みだした。
暗がりだ、鳥肌がたっている事に警察官は気が付かなかっただろうが。


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The Sixth Sense (6)


煙草の箱とジッポのライターそっと目の前に出された。「奪うように」受け取ろうとしたが、そっと受け取ってしまった。落ち着いたフリをして煙草に火を点けたが、ライターの火で震えた手と真っ青な顔が丸見えだった。
それでも芝居は続ける事にした。「本当に警察かどうか証明してください」と言うとTVで見た事の有る手帳が目の前に出された。

「これでいい?」の言い方が腹立たしかったが、とっくに彼らは警察なんだと自分に言い聞かせていたので、安心したのも事実だった。
それからボクへの質問が始まった。「ちょっと、聞きたい事が有るんだ。」と言われたが、その前に身分証明だ。今までにも良く有ったことだが、まず日本人だという事を証明しなければならない。

自分では極めて日本人顔だと思っているのだが、そう思ってくれない人も多い。「今回もか」と言う程度の事だが、慣れ親しんだ質問は落ち着くにはちょうど良かった。

それからはバイトの帰りの学生だと言う事を説明して身分の照明は終わった。ポケットの中とか調べられるのかと思ったが、それはなかった。これで質問の核心へ話は進むと思っていたらさっきの元お嬢さんとの関係に話が進んだ。

「随分親しそうだが知り合いなのか」と言われたので、アルバイト先の常連だという事を話した。あの人たちと知り合いだと思われた事自体が苦々しかった。
「彼女らの客になった事が有るのか」と言われた時には、きっぱりと完全否定した。

「普段通るこの道で彼女たちと会うのは初めてです」と言うと、それに関しては既に知っているような口ぶりで返答された。
「君が誘われたと言ってくれれば、彼女たちを連れて行って詳しい話を聞く事が出来る」と言われた。これに関しても完全に拒否した。

実際、あれはビジネスとしての交渉として成り立っていないはずだ。さっきの事を思い出すだけで、胸がムカムカした。
ボクと彼女たちの間には大きな溝が存在し、決して交じり合う事の出来ない別世界に存在しあっていると言いたかった。

ただ直接ボクに用が有った訳ではない事がわかりだして、少しだけ余裕が出来た。
彼らは何がしかの情報が欲しくて接触してきただけで、深夜歩いていたボクにそれほどの興味はないのだと思った。

彼らの求めている情報が何なのか興味が出だした。質問が続いたが、質問の趣旨を想像したり一旦考えてから答える事が出来るようになった。
彼らもそれに気が付いたようで、今までよりもストレートな会話になりだした。

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The Sixth Sense (5)


直接的な痛みは無かった。突然の事でビックリはしているが、意識もしっかりしている。つまり、殴られて気を失っている訳ではないし、何かが体のどこかに刺さっている訳でもないし、死に至る状況ではないと判断しても良いだろう。自分に「落ち着け、まだ大丈夫だ」と言い聞かせた。

歯を食いしばって、首に巻かれた腕を握ってもがいてみたが、がっしりと押さえ込まれている。ボクより背が低いのだろう、真後ろと言うよりも少し斜め下から力を加えられている感じだ。太い腕と頑丈な体から殺意は感じられなかったが、絶対に外せないという自信は伝わってきた。

変な恐怖感が段々と大きくなり、気持ちが折れそうになりだした。「やっぱり、やばいかな」と思いそうになる気持ちを必死で抑えた。それでも鳥肌が立つのがわかった。「落ち着け」と、急いで何度も自分に言い聞かせた。
こちらが力を入れると向こうも力が入り、こちらが力を抜くと向こうも力を抜く状態で、これ以上強く絞めつけようとしないのが救いだった。

「チャンスは来る」と自分に言い聞かせて、状況を把握しようとした。が、結局、把握でき理解できた状況は、絞めている腕ははずれそうもないという事と、今の自分が冷静になんてなれない事の二つだけだった。目の前に「あきらめなさい」って看板がぶら下がっているようだった。

その看板の文字を読もうと目の焦点を前方に合わせると、一人の男が目の前にいるのがわかった。暗がりに目が慣れてきて、多少は落ち着いてきたのかもしれないと思った。
それと同時に最悪だと思っていた状況よりももっと最悪だと自覚する事を強要された気分になった。「何とかしよう」のその「何とか」が全く頭に浮かばなかった。

それでも「新たな発見は、状況の変化の入り口」のはずだ。この男がボクにチャンスをくれるかもしれないと思うことにした。神経を目の前の男に集中した。

近づいてくる男は、背は自分より低いがガッシリとした男だった。男がボクの落とした煙草の箱とジッポのライターを拾い上げるのが見えた。近づいてくる顔が笑っているようにみえた。

手を伸ばす事が出来れば届くだろう距離まで近づいた。ただ両手は羽交い絞めにしている腕への対応で忙しいらしく、それ以外の仕事をする気になってくれそうもない。
自分がサッカーをやっていた事を思い出した訳ではないが、これしかないという事が頭に浮かんだ。「状況の打開」なんて余裕の無い今は「状況の変化」にかけるしかない。覚悟を決めた。

体を軽くひねり体重を移動させて右足に力を入れ、蹴りをいれようと力をこめた瞬間、羽交い絞めにしていた男が耳元で「警察だ、大人しくして。静かに。大丈夫だから」と言った。

少しも大丈夫な状態ではなかったが、警察と言う言葉に体も心も反応したのは確かだった。落ち着いたとは言わないが、確実に筋肉は緊張から解き放たれたフニャフニャの状態になった。結果として残り少ない筋力は、蹴るよりも立っている事に使用する事になった。

ほんの少しの沈黙した時間は今まで全開だったボクの神経を緩和させるのに十分だった。
麻痺していた感覚が戻ってきた。後から羽交い絞めにしている男の背格好も何となく感じられるようになった。

その瞬間、ボクの背中と彼の胸の間に固い塊を感じた。さっきよりも血の気がひくスピードは速かった。別に気を抜いた訳じゃ無いが、体中の力が抜けていくのがわかった。

しゃがみこみそうなのを必死で我慢した。抵抗する気は全くなくなっていた。「大人しくしてね」と言いながら男はそっと力を抜いて、自由にしてくれた。勿論、立っているのが精一杯のボクに、何の抵抗も出来る訳が無かった。

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2010-2011



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